The Origin
楽園の裏側、誇りの真髄。
アロハシャツの起源は、世の中で語られるような、決してロマンチックな物語ではありません。
それは、楽園の裏側に刻まれた、日本人移民たちの凄絶な生存記録です。
番号で呼ばれた先人たち
19世紀後半、ハワイへ渡った多くの日本人を待っていたのは、過酷なプランテーション労働でした。
彼らは名前ではなく、胸に掲げられた「番号」で管理されました。人間としての尊厳を削り取られる日々。ようやく契約を終えても、真っ黒に日焼けした姿は日本人として認められず、故郷の土を踏むことさえ叶わなかった人々がいました。
「自分は何者なのか」という問いだけが、渇いた心に重くのしかかる。
そんな極限の中で、彼らは故郷から携えてきた「大切な着物」にハサミを入れました。
それは美学などではなく、生き延びるための、泣く泣くの選択でした。
アロハシャツの原点は、けっして文化の融合などという美しい言葉で片付けられるものではなく、守るべき誇りを守り抜くための、血を吐くような決断だったのです。
黄金時代の桐生、そして現在
同じ頃、私の故郷である織都・桐生は、世界一の絹織物で黄金時代を謳歌していました。
皮肉にも、ハワイの同胞が番号で呼ばれていた時代、桐生では華やかな技術が花開いていた。
しかし現代、その誇り高き技術は継承者を失い、消えゆこうとしています。
虐げられた地で文化を守り抜いたハワイの精神と、豊かさの中で失われつつある桐生の至宝。
私は、この二つの血統を、一着のアロハシャツに編み込む決意をしました。
私たちが守る、三つの真実
1. 文化を二度死なせない
文化には、二つの死があります。一度目は、使われなくなったとき。二度目は、記憶から消え去ったとき。
着物が袖を通される機会を失った今、私たちはそれを「アロハシャツ」という新たな姿へ昇華させます。使い続けることで一度目の死を防ぎ、その美しさを現代に刻むことで二度目の死を阻む。それが、私たちの祈りです。
2. 安価と大量生産への決別
簡単に手に入るものは、簡単に捨てられます。それでは文化は守れません。職人を機械のように扱い、利益だけを追う世界では、次世代に誇りを受け継ぐことは不可能です。
私たちは、一針に魂を込める手仕事を正当に評価し、適正な対価を支払います。それが、職人が子どもたちに「この仕事は誇らしい」と語れる未来を創ると信じているからです。
3. 唯一無二のアーカイブ
たとえ二着分が作れる生地であっても、私たちは決して二着目を売りません。残りの一着はブランドの記録(アーカイブ)として永久に保管します。あなたが手にする一着が、世界でただ一つの「歴史の断片」であることを保証するために。
流行(モード)ではなく、魂の帰還
これは、廃棄が勿体ないから始めた「リサイクル」ではありません。世に溢れる、古さを楽しむための「リメイク」でもありません。
失われつつある日本の誇りを、同じ志を持つ「同志」へ手渡すための、命がけの継承です。
このシャツに袖を通すことは、歴史の証言者になるということです。
「自分はどこから来たのか」という問いへの、静かな、けれど確かな答えを纏うこと。
織都・桐生から、世界へ。
あなたのアイデンティティを再発見する旅が始まります。